記事一覧

ライブチケットやLPは即完売 注目のアーティスト・カネコアヤノの思いとは

ファイル 11-1.jpgファイル 11-2.jpgファイル 11-3.jpgファイル 11-4.jpg

ミュージシャン・カネコアヤノの音楽には、日常にある恋のときめき、自分へのやるせなさ、言葉にならないノスタルジーが詰め込まれている。独り言をつぶやくように歌うかと思えば、感情むき出しの声で歌い上げる。はかなさすら感じさせる弾き語りをするかと思えば、きゃしゃな見た目のイメージを覆すパワフルなバンドセットライブを行なう。一度聴けば胸に残る何かを感じずにはいられないカネコのライブは、チケット即日完売が続出するほどの人気ぶりだ。ターニングポイントとも言える昨年4月発売の3rdアルバム「祝祭」も、「第11回CDショップ大賞2019」入賞作品に選出された。

さらに昨年10月に行われた「リロト(LIROTO)」の2019年春夏東京コレクションでも音楽を担当するなど、ファッション業界からも熱い視線が注がれている。4月17日に両A面シングル「愛のままを/セゾン」を発売し、5月には自身最大規模での東京、大阪、名古屋でのワンマンツアーを控える中で話を聞いた。

中学1年のとき、ギターがやりたいって母親に言ったんですが、なぜか時間差で中学3年のときにギターを買ってもらったのが最初です。そのときはすぐに練習しなったんですが、18歳くらいから誰に聞かせるでもなく曲を作り始めました。その後、大学でできた音楽好きの友達がきっかけで今も録音をしてもらっているレコーディングエンジニアや、前の事務所のマネジャーが音源を聴いて気に入ってくれて。気づいたら前の事務所に入っていて、レコーディングをしてステージにも立っていました。

心の奥底ではやりたい気持ちがあったのですが、無理だと諦めていました。だからその人たちに会っていなかったら歌を歌っていなかったかもしれないですね。

当時はチャットモンチーが好きでした。あとピアノを習っていた姉を見ていたから、楽器がやりたくなったのもあると思います。それで私もピアノを習ったこともあるんですけど、誰かに教わるのが極端に苦手で……。やれって言われるとできないんです。でも楽器はずっとやりたかったのと、ギターは誰かに強制されたわけではないから楽しかったですね。

漫画が大好きで、何年か前にアニメで観た「はじめの一歩」は自分を変えましたね。やる気につながってポジティブ思考のきっかけになりました。キャラクターは間柴了と鷹村守が好きです。

作れなくて悩んだことはあまりないので、できる方だと思います。普段の会話からいいと思った誰かの言葉や、印象に残った景色をメモしていて、そのかけらたちを肉付けして作ることが多いです。一つでも歌いたいテーマがあれば書けますね。

一番は「フジロックフェスティバル」や「カウントダウン・ジャパン」、スピッツが主催する「新木場サンセット」に呼んでもらって、一昨年では考えられないくらい大きい場所に立てたことです。去年はそれらを通して、私のことを知らない人や、私も会ったことないような人にも観てもらえたような1年になりました。

内向的な私が「ステージに立っているときが一番楽しい」って感じるようになったのは、お客さんやバンドメンバー、スタッフたちのおかげだと思っているから、お返ししたい気持ちはとても強いです。

私はずっと漫画やアニメが好きだし、おもちゃ売り場のキラッとした宝石みたいなものもいまだに欲しくなるし、キーホルダーやぬいぐるみも買っちゃう。そんな自分を気にしていた時期もあったけど、今は「まあいいか、自分は自分だし」という気持ちです。それに友達も就職していくし、音楽だって最初は母にも反対されたけど、原点に戻れば好きでやっているだけですし。ファッションだって、派手な服を着ようがずっと同じ服を着ようがみんな気にせず好きに生きてくれと思います。

レコードは単純にそれで聴くのが好きなんです。それに、デカイってかっこいいじゃないですか。「祝祭」のジャケットをとても気に入っているんですが、レコードにしたら絶対かっこいいと思っていました。重量感や存在感もいいですよね。盤が透明なのも昔から透明が好きだからで、小さい頃買ったゲームボーイカラーもクリアでした。

弾き語りアルバムは、同じように力を入れて活動しているバンドに名前をつけずにどうして“カネコアヤノ”という名義でやっているのかを、音楽を通して伝えたくて作りました。私はギターで作曲していますが、一番生々しい音楽は弾き語りで、それに生まれたてのものには何もかなわないと思うんです。

ライブでの気の持ちようも違って、弾き語りは私自身にもお客さんに対しても、話しかけて伝えるように歌っています。バンドの時ももちろん伝えようとしていますが、とにかく今までで一番楽しいライブにしようって思いながら演奏していますね。“繊細”か“爆発”かみたいな感じです。

最近は私服と衣装の半々くらいですが、弾き語りだったら絶対ワンピース、バンドだったらカットソーやパンツというように分けて自分で選んでいます。会場の雰囲気も気にはしますが、基本的にはそのときの気分です。知り合いのブランドに衣装を作ってもらったり、借りることもあります。

「リロト」や「カナタ(Ka na ta)」「フタツククリ(FUTATSUKUKURI)」などが好きです。あとは高円寺の「郊外SUBURBIA」っていう古着屋はよく行きます。

裸足だと演奏しやすくて、集中できるんです。ステージ袖まで来たら「よっしゃ、やるぜ!」って感じで靴下を脱いでいます。それに合わせて、衣装もワンピースだったらすね丈くらいのものを選びますね。

去年の春ごろに高崎の「セプテンバーレコード」というお店に遊びに行ったとき、飾ってあったトッド・ラングレン(Todd Rundgren)の「未来から来たトッド(原題、Todd)」のアルバムジャケットを見て「これだ!」ってなったんです。このサイドを短く切った“クラゲみたいな髪型”になりたいと思って、翌日ずっと通っている美容室で「“クラゲみたいな髪型”にしてください」とお願いしました。実は短い部分にパーマを当てたんですが、髪質的に全くかからなくて今に至ります。

それに髪が長いとギターにかかって演奏中に邪魔になることがあるんですが、この髪型のおかげで解決しました。

とにかく楽しみです。東京は東京で、名古屋は名古屋で、大阪は大阪で、それぞれの場所でライブをやってきた中で一番いい日にします。来てくれた人たちもそう思ってくれたらうれしいですし、ライブに関してはそれが全てですね。あとはライブ中に歌詞を忘れないようにします(笑)。

ライブはやっぱり大きいところでやりたいです。日本武道館でもやってみたいですし、音楽は“シンプルに大きく”ですね。それに好きな衣装を着て、ずっと歌い続けると思います。あとは素敵な内装の家にネコと一緒に住んで、おいしいものを食べて、部屋にはかっこいい本棚を置いて好きな本を並べたいです。今大切にしているギターや服も手放さずにずっと一緒にいたいですね。